新 し い歴 史 教科 書 を つ く る 会
つくる会FAX通信
第192号 平成19年(2007年)5月11日(金) 送信枚数 6枚
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教科書発行に関する「つくる会」の見解を決議
あくまでも、趣意書にもとづく『新しい歴史教科書』を守る
「新しい歴史教科書をつくる会」は5月10日、緊急理事会を開催し、2月26日付けの扶桑社からの回答文書等について協議した結果、「教科書発行に関する『つくる会』の見解」を決議しました。理事会は扶桑社に対して再考を求めるとともに、今後、早急に評議会・顧問会議(合同会議)などでこの「見解」にもとづく今後の対応方針を協議していくこととしました。「見解」の全文と関係文書3点を以下に掲載します。なお、同一の内容をホームページにも掲載します。各支部におかれては、可能な限り多くの会員に周知されるようお願いいたします。
教科書発行に関する「つくる会」の見解
平成19年5月10日
新しい歴史教科書をつくる会
(1)「新しい歴史教科書をつくる会」は、株式会社扶桑社に対し昨年11月21日付文書で、現行の『新しい歴史教科書』『新しい公民教科書』について、次期検定・採択にも参入すべく継続発行することを要望する申し入れを行いました。この申し入れに対して、扶桑社から本年2月26日付の文書にて回答がありました。また、つくる会は別途、世話人代表・屋山太郎氏を発信人とする「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」(略称・教科書改善の会)の「世話人ご就任のお願い」と題する4月5日付文書を受理しています。つくる会としては、扶桑社からの2月26日付回答文書とこの屋山氏発信の文書は内容的に一体のものであり、後者は前者の内容を具体化したものであると認識します。
(2)扶桑社からの2月26日付回答文書のうち、歴史・公民教科書の発行に至る事実経過に関しては、つくる会の認識と特に異なってはいません。つくる会が設立されて以降果たしてきた国民的教育運動の意義も正しく捉えられているといえます。ただし、回答文書のうち<扶桑社教科書は、「新しい歴史教科書をつくる会」がこれを推薦するという構図で発行されたものであります>とある部分には若干の補足が必要です。つくる会は団体として教科書の執筆に携わったことはありませんが、『新しい歴史教科書』の発行はもともとつくる会が社会的に問題提起したもので、設立趣意書によって教科書の理念を定め、パイロット版『国民の歴史』によって新しい視点を提起し、つくる会の理事が中心的な執筆者となって教科書を執筆し、扶桑社がその発行を引き受けるという経過で進めた事業です。従って、つくる会はでき上がった教科書を「推薦する」という構図で関与したというよりも、基本方針の発案から執筆者の選定、教科書の編集、そしてその後の普及に至るまで、扶桑社との緊密な協力のもとに進めてきたというのが真実です。
(3)扶桑社からの2月26日付回答文書のうち、組織に関わる問題については、つくる会の認識と異なるところがあります。回答文書には<一昨年9月以降、「新しい歴史教科書をつくる会」が会長人事などで組織内に混乱が生じ、昨年、有力メンバーの一部が、つくる会と袂を分かって「日本教育再生機構」を設立する事態となり、「新しい歴史教科書をつくる会」が事実上分裂する状況となりました>とあります。しかし、経過全体を総括していえば、理事を務めていた一部のメンバーが理事を辞任し、その後別途に「日本教育再生機構」なる組織を設立したという事実があるにすぎません。つくる会は従来どおり地方支部も正常に活動し、本部でもほぼ月例ペースで理事会を開催しており、会報『史』も定期的に発行していて、何ら分裂の事実はありません。また、つくる会は新しく設立された教育再生機構に対して対立したり、その活動を妨害したりしたことは全くありません。それどころか、つくる会の理事のうちには教育再生機構の役員に就任したり講師として協力したりするなど、同機構への協力関係を発展させてきました。そもそもつくる会と教育再生機構は、カバーする問題の領域も活動の形式も基本的に異なっており、教育運動の観点からは、つくる会とは別種の教育運動団体として、つくる会とともに協力的に発展すべきものです。以上を要約していえば、つくる会そのものが分裂した事実はいっさいなく、『新しい歴史教科書』『新しい公民教科書』の教科書とつくる会と発行元の扶桑社との関係は従来どおりであり、いまここで特に変更しなければならない理由はありません。
(4)しかるに、扶桑社からの2月26日付回答文書と屋山氏発信の「世話人ご就任のお願い」の文書によれば、扶桑社は別途、教科書発行専門の子会社を設立し、新たな組織体制を作り、新たな教科書の製作・発行を目指しています。そこで扶桑社の最終的真意を確かめるため、4月26日、つくる会執行部全員(小林会長、高池副会長、藤岡副会長、福地副会長)が扶桑社に出向き、話し合いの場をもちました。その結果、上記2文書の内容も含めて次のことが確認できました。
①片桐松樹扶桑社社長を社長とする教科書発行専門の子会社を5月中旬に設立し、社名は「育鵬社」とする。
②教科書名は変更する。
③編集委員会を新たに作り、そこで執筆者を選定する。
④歴史教科書の座長には伊藤隆氏を当てる。
⑤公民教科書の座長には川上和久氏を当てる。
⑥屋山太郎氏、八木秀次氏、小林正氏を個人の資格で編集委員会の顧問とする。
⑦教科書の内容を全面的に書き換える。
⑧採択などに取り組む新たな全国的組織を「教科書改善の会」として作る。
⑨「教科書改善の会」の事務局は教育再生機構に置く。
⑩現行の『新しい歴史教科書』『新しい公民教科書』については、次期検定・採択までの期間は扶桑社から発行する。
(5)以上の状況を総合的に考慮すると、今後の教科書の編集は、「教科書改善の会」と新会社育鵬社が共同して行い、その採択活動も教育再生機構に事務局を置く「教科書改善の会」が育鵬社と密接な関係を保持しながら行うことになると考えられます。つくる会は、過去10年間にわたって教科書改善の必要性を訴え、『新しい歴史教科書』『新しい公民教科書』を実現させてきました。そのつくる会にとって、今回の扶桑社の提案は受け入れることはできません。現行の『新しい歴史教科書』『新しい公民教科書』は、つくる会と扶桑社の密接な協力によって作り上げたものであり、教科書への社会的評価は高く、他社の教科書にも多大な影響を与え、日本の教育界に大きく貢献したことはだれもが認めるところです。これに大きく手を加えたり、全面的に書き直したりする必要のないものです。従って、これら2つの教科書に必要最小限の改善を加え、次期検定に提出して継続発行することは、企業としての経費の面から考えても最も合理的であり、また企業の社会的責任でもあります。執筆者についても、若干の新しい執筆者は加えるものの、原則としては従来の執筆者のままとし、編集会議は執筆者の間で行うものとするのが実際的であり、賢明であります。扶桑社の再考を求めます。
(6)昨年末、念願の教育基本法の改正がなされましたが、改正教育基本法によって強調されている日本の伝統の尊重や国を愛する態度など、教育基本法改正の核心はまさにつくる会の掲げた趣意書の精神そのものであり、つくる会の運動と扶桑社の教科書とは教育基本法改正の機運を作り出した要因の一つであると自負すべきものです。これこそ、つくる会の趣意書の理念の先見性を明かし立てるものです。その趣意書の理念を体現した『新しい歴史教科書』『新しい公民教科書』を決して絶やしてはなりません。つくる会としては、今までの成果を踏まえ、教育基本法の改正が行われたことにも合わせてさらなる改善を加え、採用の現場から上がってきた要望にも積極的に応じ、2つの教科書を堅持することによって国民の期待に応える所存です。つくる会は、会員の固い結束のもとに組織の総力を挙げて取り組み、次期採択をめざして継続発行していく決意を表明します。
<付属文書>
1)平成18年11月21日付、つくる会より扶桑社社長片桐松樹氏宛て「『新しい歴史教科書』『新しい公民教科書』の継続発行に関する申し入れ書」
2)平成19年2月26日付、扶桑社社長片桐松樹氏よりつくる会宛て回答文書
3)平成19年4月5日付、「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」代表世話人・屋山太郎氏発信の「世話人ご就任のお願い」と題する文書